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電子の絆

「パパ、今までのアタシの養育費として5000万円振り込んで。パパのスパイしてた国に飛んだりするから。」 アンリは父親に通信を送った。「お前なあ、そんなもんでいいのか?じゃあ今からいう仮想通貨を買え。俺が後で値を上げてやるから。」 横にいるケンは自給980円のバイトをしている自分と目の前の会話との落差に気が遠くなった。 「わかった。全財産ぶち込む。」アンリは言った。「ケン、アンタにも半分あげる。口止め料よ。」

アンリが仮想通貨を15万円分買ったことを父親に伝えるとチャートに異常が起こった。みるみる値が上がっていく。 「おいおいお前の父ちゃんいくら金持ってんだよ。」ケンはさっきからタバコを持つ手が震えている。 「これで、5000万。」アンリは決済した。「20倍の倍率で取引してたから楽勝だったわ。」アンリは勝ち誇りながらケンのタバコに火をつけ思い切りむせた。 「2500万円ずつか、何に使う?」ケンが聞いた。「アタシの野望を聞きたい?」アンリが怪しげな目で言った。 「アタシは将来孤児院を作りたいの。」意外とまともだなとケンが思っているとアンリは続けた。「全ての子供にアタシのハッキング技術を伝えて世界一のハッカー集団にするのよ!」

2人は空港へ向かった。「一週間もバイトと学校休みにしちゃったよ。大丈夫かな?」ケンがいうと、「あんた、もう奨学金も生活費も心配しなくていい額の金もってるんだよ?」アンリがニヤニヤしている。

「カツラアンリさんですね」黒ずくめの男が空港で声をかけてきた。「あんた誰?」アンリが警戒する。「アナタの父親からメールがきました。是非我が国にお越しください。」 男は微妙な発音の日本語で言った。「我々の国は電子機器の操作に習熟したアナタを迎え入れます。」「パパみたいにスパイになれってこと?」「そうです。」

ケンが青ざめた。「スパイってお前冗談じゃねえよ!コイツはまだ16歳の普通の女の子だぞ?」そんなケンとは正反対の表情でアンリは言った。「報酬しだいね。」

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